
現在では多くのスマートフォンが「デュアルSIM」に対応しています。
これは1台のスマホで2つのSIMを同時に使える仕組みで
・仕事用とプライベート用を分ける
・通話SIMとデータSIMを分ける
・海外SIMと日本SIMを併用する
といった使い方が可能になります。
しかし海外では早くから普及していたデュアルSIMが日本で一般的になったのは比較的最近のことです。なぜ日本のスマートフォンはデュアルSIM対応が遅れたのでしょうか。
その背景には、日本の携帯市場特有の「ガラパゴス化」があります。
日本の携帯市場はキャリア主導だった
日本の携帯電話は長い間、通信会社が主導する市場でした。
代表的な通信キャリアはNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクです。
日本ではスマートフォンを購入する際、端末と通信契約をセットで購入するのが一般的でした。
キャリアショップで端末を購入しその会社の回線を契約して使うというスタイルです。この仕組みではユーザーが他社SIMを使うメリットはほとんどありません。
例えばドコモのスマホに他社SIMを入れる、データだけ格安SIMを使うといった使い方は想定されていませんでした。むしろ通信会社にとってはユーザーが他社のSIMを使うことは収益の減少につながります。
そのため日本では長く「SIMロック」が存在し他社のSIMカードを利用できない端末が主流でした。
こうした事情から日本ではデュアルSIMの必要性があまり生まれなかったのです。
海外ではデュアルSIMが実用機能だった
一方で海外では事情が大きく異なります。
多くの国では通信料金が高かったり地域によって通信会社の電波状況が異なったりします。そのためユーザーは複数のSIMを使い分けることが一般的でした。
例えば、通話用SIM・データ通信用SIMを別々に使ったり、海外旅行では現地SIMを追加したりします。またヨーロッパやアジアでは国境をまたいで移動する機会も多く、ローミング料金を避けるために現地SIMを使う文化もあります。
こうした事情からデュアルSIMは実用的な機能として早くから普及しました。
特に中国やインドなどではデュアルSIMはほぼ標準機能となっています。
日本独自の「ガラパゴス化」
日本の携帯電話は独自の進化を遂げたことで知られています。この現象は「ガラパゴス化」と呼ばれます。
日本の携帯電話にはおサイフケータイや、かつてはワンセグ・赤外線通信など海外にはあまりない機能が多数搭載されてきました。
これらの機能は便利でしたが日本独自の仕様が増えた結果、海外との互換性が低くなってしまいました。端末もキャリアごとに専用モデルが作られることが多く世界市場とは別の進化をしていたのです。
この「日本独自の携帯文化」がデュアルSIM普及の遅れにもつながりました。
日本のスマホ事情を変えたSIMフリー
状況が変わり始めたのは2015年以降です。
政府の方針によりSIMロック解除が進みSIMフリー端末が増えてきました。
さらに格安SIM(MVNO)の普及も大きな転機になりました。
ユーザーは
・通話はキャリア回線
・データは格安SIM
というように回線を使い分けるようになりデュアルSIMのメリットが広く認識されるようになりました。
またHTC・Huawei・ASUSといった海外メーカーのスマートフォンが日本市場に参入したことも影響しています。これらの端末はもともとグローバル市場向けに作られているため、デュアルSIMが標準機能になっていることが多いのです。
現在はデュアルSIMが標準機能に
現在では多くのスマートフォンがデュアルSIMに対応しています。
例えばiPhone 15 は「物理SIM+eSIM」のデュアルSIMに対応しています。物理SIMが廃止された最新のiPhoneでもeSIMのみでもデュアル運用(デュアルeSIM、DSDV)が可能になっています。
Androidスマートフォンでも、ほとんどの機種がデュアルSIMを搭載しています。
日本でデュアルSIMの普及が遅れた理由は技術の問題ではなく、日本独自の携帯市場の構造にあったと言えるでしょう。