
3G終了で「通話の仕組み」はどう変わったのか
日本でも3Gサービスの終了が進み、音声通話の仕組みは大きく転換しました。
かつての通話は「回線交換」と呼ばれる専用の通話網を使っていましたが、現在はインターネットと同じ仕組みの上で動くようになっています。
その中心にあるのがVoLTEです。
4G(LTE)回線を使って通話するこの仕組みによって、音質や接続速度は大きく改善されました。
では、その次は何か。
それがVoNR(ブイ・オー・エヌアール)です。
■ VoNRとは何か
VoNR(Voice over New Radio)は、5G回線を使って音声通話を行う技術です。
ここでいう「New Radio(NR)」とは、5Gで使われている無線方式の名称です。
つまり関係性としては、
- VoLTEは4G(LTE)で通話
- VoNRは5G(NR)で通話
という構造になります。
VoNRは、VoLTEをそのまま5Gに移行させたものと考えると理解しやすい技術です。
■ VoNRとLINE通話は何が違うのか?
「データ通信で通話するなら同じでは?」と思う人も多いですが、実は仕組みも役割もまったく別物です。
■ VoNRは“電話回線の進化版”
VoNRはキャリアが提供する正式な音声通話です。
- キャリアの音声網(IMS)で処理
- 電話番号で発着信
- 緊急通報(110 / 119)対応
- キャリアの音声ネットワーク(IMS)を使用
- 高音質・低遅延
👉 従来の電話の正統進化
■ LINEなどは“インターネット通話”
LINEなどの通話は、いわゆるIP通話です。
- アプリ同士で接続
- 電話番号は必須ではない
- 緊急通報は不可
- 回線品質は通信環境に依存
👉 仕組みは「データ通信の応用」
■ 一番大きな違いはここ
| 項目 | VoNR | LINE通話 |
|---|---|---|
| 種類 | 電話 | アプリ |
| 通信 | キャリア音声網 | インターネット |
| 緊急通報 | ○ | × |
| 信頼性 | 高い | 環境依存 |
■ なぜこの違いが重要なのか
今後5Gが進んでも
- 重要な通話 → VoNR
- カジュアル通話 → LINE
という棲み分けは続きます。
VoNRは「電話の進化」、LINE通話は「ネット通話」。似ているようで役割が異なるため、今後も両方が使い分けられていくと考えられます。
■ VoLTEとの違い
VoNRはVoLTEの上位に位置する技術ですが、その違いは単なる世代の違いにとどまりません。
・通信の遅延がさらに少なく
音声のやり取りにおけるラグが減り、より自然な会話に近づきます。
・音声品質も向上
VoLTEでも十分に高音質ですが、VoNRではさらに広い帯域が使えるため、よりクリアな音声が期待されます。
さらに重要なのが「切り替えが不要になる」という点です。
現在の5Gスマートフォンは、データ通信は5Gで行いながら、通話時には4Gへ切り替える動作をしています。(フォールバック)
VoNRではこの切り替えが不要になり、通話も含めて5Gで完結するようになります。
■ 現在の実態:まだVoLTEが主流
現時点では、ほとんどのユーザーはVoNRを使っていません。
5G対応スマートフォンであっても、実際の通話はVoLTEで行われているケースが大半です。
これはインフラ側の問題が大きく、5Gエリアは拡大しているものの、通話を安定して支えるにはまだ発展途上です。
そのため、通話時には安定した4Gへ戻す設計が採られています。
■ 日本のキャリア対応状況(2026年時点)
国内キャリアもVoNRの導入は進めていますが、状況はまだ統一されていません。
NTTドコモでは一部エリアで提供が始まっていますが、利用できる環境は限定的です。KDDI(au・UQ・povo)は比較的積極的で、条件が揃えば利用可能です。ソフトバンクは段階的に導入しており、本格展開はこれからです。楽天モバイルは独自ネットワークのため、VoNRという形での位置づけはやや異なります。
全体としては、まだ移行期にある状況です。
| キャリア | VoNR対応状況 | 提供状況 | 備考 |
|---|---|---|---|
| NTTドコモ | △ | 一部エリア | 技術的には先行だが限定提供 |
| KDDI(au/UQ/povo) | ○ | 対応端末で利用可 | 国内では比較的積極的 |
| ソフトバンク | △ | 一部エリア | 段階的に拡大中 |
| 楽天モバイル | △ | 独自方式 | VoNRとしての整理はやや特殊 |
楽天モバイルは、標準の音声通話(VoLTE)に加えて、「Rakuten Link」というアプリ通話を主軸にしている点が特徴です。このため、VoNRのような“回線通話の進化”とは少し異なる方向でもサービスを展開しています。
■ 現状のまとめ
- 完全対応キャリアはまだ存在しない
- エリア・端末・設定が揃って初めて使える
- どのキャリアも「試験 → 拡大」の段階
■ 対応機種はすでに存在するのか
端末については、すでにVoNRに対応したモデルは販売されています。
特にハイエンドのAndroidスマートフォンでは対応が進んでいます。
ただし注意点として、端末が対応しているだけでは利用できません。
- キャリアの対応
- 利用エリア
- 回線側の設定
これらが揃って初めてVoNR通話が成立します。
そのため、現状では「対応しているが実際はVoLTEで通話している」ケースが多くなっています。
■ iPhoneの対応状況
iPhoneについては、2026年時点ではVoNRは一般的には利用できません。
VoLTEには対応しているものの、新しい通信方式への対応は慎重に進められています。
この流れは、RCS対応の進み方とよく似ています。
■ 今後の普及時期
VoNRは今後確実に広がっていく技術ですが、その普及は緩やかです。
2026年以降に徐々に拡大し、2030年前後にかけて一般化していくと考えられます。
これは3Gから4Gへの移行と同様に、長期間かけて置き換わるタイプの変化です。
■ RCSとの関係
通話とメッセージは別の進化をしています。
通話は 3G → VoLTE → VoNR
メッセージは SMS → MMS → RCS
という流れです。
どちらも最終的にはデータ通信の上で動くサービスとして統合されていく可能性があります。
【関連記事】・SMS・MMS・RCSの違いとは?
■ これからの通話はどうなるのか
VoNRの普及によって、通話の位置づけそのものが変わっていきます。
これまでは電話は独立した機能でしたが、今後はデータ通信の一部として扱われるようになります。その結果、アプリ通話との違いはさらに曖昧になり、通話自体がより多機能化していくと考えられます。

■ まとめ
VoNRは5G回線を使った音声通話技術であり、VoLTEの後継にあたる存在です。
対応端末やサービスはすでに登場していますが、実際の利用はまだ限定的です。
現在は、5G通信の中で通話だけが4Gに依存している移行期にあります。
今後はインフラ整備とともに、徐々にVoNRへと移行していく流れになります。