戦場で使われる攻撃ドローンはどんな電波を使っているのか? 民生バンドから衛星通信まで通信の仕組み

近年の戦争では、ドローンは偵察だけでなく攻撃や通信中継まで担う重要な兵器になりました。特にウクライナ戦争ではFPV(First Person View)ドローンが大量に投入され、中東ではイラン製の長距離自爆ドローン「Shahed(シャヘド)」シリーズも各地で使用されています。両者は同じドローンでも、通信の仕組みが大きく異なります。スマホバンドラボらしく言えば、現代のドローン戦は「兵器の性能」だけでなく、どの周波数(バンド)を使って通信するか が勝敗を左右する時代ともいえます。

この記事では、公開されている技術資料や各国の分析をもとに、ドローンで使われる電波をバンドの視点から解説します。

目次

ドローンで使われる主な周波数帯

まずは全体像を見てみましょう。

用途主な周波数帯身近な例
操縦2.4GHzWi-Fi・Bluetooth
長距離操縦868MHz / 915MHzLoRa・LPWA・産業無線
FPV映像5.8GHzWi-Fi 5GHz帯・FPV機器
GPS受信1575.42MHz(L1)スマホのGPS
携帯通信LTE・5G各バンドスマートフォン
衛星通信Ku帯・Ka帯Starlinkなど

ポイントは、スマホの基地局だけでなく、Wi-FiやLPWAで使われる民生バンドも戦場で広く利用されていることです。

FPVドローンは「民生無線」の塊

ウクライナ戦争で最も多く使われているのがFPVドローンです。もともとはドローンレース用に発展した技術で、操縦者はゴーグルを装着し、機体から送られてくる映像を見ながら飛行させます。

軍専用に開発されたというより、市販されている次のような部品を組み合わせています。

  • ブラシレスモーター
  • FPVカメラ
  • 送信機・受信機
  • 民生アンテナ
  • オープンソースの制御ソフト

そのため比較的低コストで製造でき、大量配備が可能になりました。

操縦信号は2.4GHz・868MHz・915MHz

FPVドローンの操縦には主に3つの周波数帯が使われています。

2.4GHz:最も一般的な操縦バンド

2.4GHzはWi-FiやBluetoothと同じISM(Industrial, Scientific and Medical)帯です。

メリットは、

  • 小型アンテナが使える
  • 部品が豊富
  • 遅延が少ない

という点で、多くの民生FPVドローンが採用しています。

868MHz・915MHz:より遠くまで届く

一方、長距離飛行では868MHz(欧州)や915MHz(北米など)のISM帯がよく使われます。この帯域はWi-Fiではなく、LoRaやLPWAなど産業用無線でも利用される周波数です。

代表的な通信方式には次の2つがあります。

  • ExpressLRS
  • TBS Crossfire

特にExpressLRSはオープンソースの長距離・低遅延無線プロトコルとしてFPVコミュニティで広く普及しており、ウクライナでも多くのFPV機体で利用されていると分析されています。

映像伝送は5.8GHzが主流

FPVドローンでは操縦者がリアルタイム映像を見る必要があります。そのため映像は5.8GHz帯で送信されるのが一般的です。5.8GHzが選ばれる理由は次のとおりです。

  • 映像遅延が非常に小さい
  • 小型アンテナを搭載しやすい
  • 民生機器が豊富で価格も安い

スマホでいうと5GHz Wi-Fiに近い周波数ですが、通信方式自体はWi-FiではなくFPV専用の映像伝送システムが使われます。

なお、一部の長距離FPVでは1.2〜1.3GHz帯の映像伝送も使われますが、主流は5.8GHzです。

GPSは1575MHzを「受信」している

ドローンの位置情報はGPSやGalileoなどの測位衛星から取得します。

衛星周波数
GPS L11575.42MHz
Galileo E11575.42MHz
GLONASS L1約1602MHz付近

ここで重要なのは、GPSは送信ではなく受信専用ということです。つまりドローンは1575MHzで電波を出しているのではなく、宇宙から届く非常に弱い衛星信号を受信しています。

これはスマートフォンのGPSと基本的に同じ仕組みです。

イラン製ShahedはFPVとは別物

イラン製のShahed-136(シャヘド136)は、FPVドローンとは設計思想が大きく異なります。

FPVドローンとの違い

項目FPVShahed-136
飛行距離数km〜十数km数百km級
操縦リアルタイム自律飛行中心
映像5.8GHzで送信基本的になし
目的精密攻撃長距離自爆攻撃

Shahedは事前に設定された飛行ルートをGPSと慣性航法で飛行するため、FPVのように常時映像を送る必要がありません。

衛星通信は「地上」が使うことが多い

「Starlinkでドローンを操縦している」とよく言われますが、実際は少し違います。

多くのFPVドローンでは次のような構成です。

  1. 後方の指揮所がStarlinkでインターネット接続
  2. 前線の操縦拠点へ映像や指示を送る
  3. 操縦拠点からドローンへ2.4GHzや915MHzで無線操縦

つまり、衛星通信は地上の通信インフラとして利用され、最後の数kmは民生無線が担います。ウクライナ軍では偵察ドローンの映像をStarlink経由で司令部へ送る運用が広く報告されています。

一部ではドローン本体へのStarlink搭載も確認

2024年以降には、撃墜されたShahed系ドローンの残骸からStarlink端末が確認されたとの公開報告もあります。これは実験的・限定的な運用と考えられており、FPVドローンの一般的な通信方式とは区別して考える必要があります。

携帯電話回線(4G・5G)を使うドローンもある

実はドローンはスマホと同じLTEや5G基地局へ接続することもできます。これは主に産業用途で普及している方式です。

例えば、

  • 送電線点検
  • 橋梁点検
  • 災害監視
  • 測量

などでは、ドローンにSIMカードを搭載し、基地局経由でクラウドへ映像を送ります。

スマホと同じようにBand 1・Band 3・n77など各国の携帯電話バンドを利用するため、通信エリアは基地局の整備状況に左右されます。

一方、戦場では基地局が破壊されたり圏外になったりする可能性が高いため、FPVでは直接無線が現在も主流です。

最大の敵は「電子戦」とジャミング

ドローン戦では、電波を飛ばすだけでなく相手の電波を止める技術も重要です。

主な妨害対象

妨害対象影響
2.4GHz操縦リンクが切れる
868・915MHz長距離操縦が困難になる
5.8GHzFPV映像が途切れる
GPS L1測位できなくなる

このため近年のFPVでは、周波数ホッピングや長距離帯域への移行など、電子戦を意識した通信方式が急速に発展しています。ウクライナでは2.4GHzから868/915MHzへ移行する動きも公開情報で確認されています。

なぜ民生バンドが戦場で使われるのか

軍用通信があるにもかかわらず、民生バンドが広く使われる理由は3つあります。

1. 部品が安価で大量調達できる

Wi-FiやFPV市場のおかげで、カメラや送信機、アンテナは大量生産されています。

2. 技術の進化が速い

民生FPVはレースや空撮市場が大きく、新しい無線技術や低遅延映像機器が短期間で登場します。

3. 修理・改造しやすい

オープンソースのExpressLRSなどは設定変更や周波数変更も比較的容易で、現場で柔軟に運用できます。

まとめ|ドローン戦は「バンド」の戦いでもある

現代の攻撃ドローンは、1つの通信方式だけでは動いていません。

通信方式主な周波数帯
FPV操縦2.4GHz
長距離操縦868MHz・915MHz
FPV映像5.8GHz
GPS測位1575MHz(L1)
携帯通信LTE・5G各バンド
衛星通信Ku帯・Ka帯

スマートフォンではBand 3やn77が重要ですが、ドローンではWi-Fiと同じ2.4GHz・5.8GHzや、LPWAでも使われる868MHz・915MHzが主役です。

そしてウクライナのFPVドローンとイラン製Shahedに共通して見えてくるのは「機体性能」だけではなく、通信・衛星・電子戦を組み合わせた電波技術が、戦場の重要なインフラになっているという事実です。

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本記事は公開されている報道資料、軍事分析レポート、ドローン技術資料などをもとに作成した技術解説記事です。戦場で使用されているドローンの通信方式や周波数は軍事機密となる場合も多く、公開情報には限りがあります。そのため記事内には、民生ドローン技術や公開分析をもとに推定されている内容も含まれます。
実際の作戦環境では通信方式や周波数が変更される可能性があります。

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