USB PPSが主流に!?スマホの充電規格を整理|USB PD・PPS・QC・PowerIQ・Qi2の違い

スマートフォンの「急速充電」は、ここ数年で大きく進化しました。
以前は「○W」という数字を見れば、なんとなく充電性能を判断できました。

しかし現在は、

  • USB PD
  • PPS
  • Quick Charge(QC)
  • SUPERVOOC
  • HyperCharge
  • SuperCharge
  • TurboPower
  • PowerIQ
  • Qi
  • Qi2

など、さまざまな名前が登場します。

「USB PDとPPSは何が違う?」

「PPSって新しい急速充電規格なの?」

「100Wの充電器なら100Wでスマホを充電できる?」

「AnkerのPowerIQってUSB PDとは別の規格?」

こうした疑問を持つ人も多いでしょう。実は、これらはすべて同じ種類のものではありません。

この記事では、スマートフォンの充電に関係する規格や技術を整理して、それぞれの役割を分かりやすく解説します。

目次

スマホの充電は「○W」だけでは分からない

まず覚えておきたいのが、急速充電の性能は「最大○W」という数字だけでは決まりません。

例えば「67W急速充電対応」と書かれたスマートフォンがあったとしても、67Wの充電器を用意すれば必ず67Wで充電できるわけではありません。

スマートフォンの急速充電では、

スマートフォン本体×充電器×充電ケーブル×対応する充電規格・技術

の組み合わせが重要です。

そして現在、特に重要になっているのがUSB PDとPPSです。

まず知っておきたい「充電規格」と「メーカー独自技術」

充電について調べると、USB PDやPPSと一緒に、PowerIQやSUPERVOOCなどの名前も出てきます。

しかし、これらは同じカテゴリーではありません。

大きく分けると、次のように考えると分かりやすいでしょう。

種類代表例役割
標準的な給電規格USB PDUSBで電力を供給するための基本的なルール
USB PDの機能PPS電圧・電流を細かく調整
急速充電技術Quick ChargeQualcommの急速充電技術
スマホメーカー独自技術SUPERVOOCなど高速充電を実現する独自方式
充電器メーカー独自技術PowerIQ機器の認識や電力配分などを行う
ワイヤレス充電規格Qi・Qi2ワイヤレスで電力を供給する規格

この違いを理解しておくと、充電器のスペック表がかなり読みやすくなります。

USB PDとは?

USB PD(USB Power Delivery)は、USBを利用して大きな電力を供給するための標準規格です。

スマートフォンだけでなく、

  • タブレット
  • ノートパソコン
  • モバイルバッテリー
  • ゲーム機
  • その他のUSB機器

などにも利用されています。

つまりUSB PDは、スマートフォン専用の急速充電規格ではなく、USB機器で幅広く利用される給電規格という位置付けです。

USB PDでは、接続された機器同士が電力に関する情報をやり取りし、対応する電圧・電流で給電します。

現在のUSB PDは大きく進化しており、USB PD 3.1では最大240Wまでの電力供給に対応しています。

ただし、USB PDが240Wに対応している=スマートフォンを240Wで充電できるという意味ではありません。

240Wの充電器なら必ずスマホも240W受けとれる?

答えはいいえです。

例えば、

  • スマホ:最大45W
  • 充電器:最大100W
  • ケーブル:100W対応

という組み合わせなら、スマートフォン側が対応する範囲で充電されます。

充電器が100Wだからといって、スマートフォンが100Wを受け取るわけではありません。

逆に、

  • スマホ:最大100W
  • 充電器:最大30W
  • ケーブル:100W対応

なら、30Wを超えることはできません。

つまり、充電器の最大出力と、スマートフォンの最大充電速度は別の話です。

ここで登場するのが「PPS」

USB PDを調べていると、最近よく目にするのが、PPS(Programmable Power Supply)という言葉です。

PPSは、USB PDとは別のライバル規格というわけではありません。

USB PDで利用される電力制御機能の一つです。

簡単に整理すると、

USB PD

大きな電力を供給する仕組み

PPS

その電力を機器に合わせて細かく調整する仕組み

と考えると分かりやすいでしょう。

PPSは何がすごい?

一般的なUSB PDでは、対応する電圧の中から適切なものを選んで電力を供給します。
一方、PPSでは充電する機器の要求に応じて、電圧や電流をより細かく調整できます。

そのため、

  • 充電状態に応じた電力制御
  • 急速充電への対応
  • 電力の効率的な利用

などにメリットがあります。

スマートフォンの急速充電では、単純に大きな電力を送り続けるのではなく、バッテリーの状態に応じて充電電力を変化させることが重要です。

PPSは、こうした細かな電力制御と相性の良い仕組みです。

なぜPPSが注目されているの?

スマートフォンの急速充電では、充電速度だけでなく、発熱や効率も重要だからです。

スマートフォンは充電中、

  • バッテリー残量
  • 温度
  • 電圧
  • 電流
  • 充電状態

などを監視しながら充電電力を調整しています。

そのため現在のAndroidスマートフォンでは、「USB PD対応」だけでなく「PPS対応」も確認することが重要になってきました。

ただし、PPS対応=すべてのスマートフォンで最高速度になるわけではありません。

スマートフォン側もPPSに対応している必要があります。

Quick Charge(QC)とは?

USB PDと並んでよく知られているのが、

Quick Charge(QC)

です。

Quick Chargeは、Qualcommが開発した急速充電技術です。
Qualcomm製のSnapdragonを搭載するAndroidスマートフォンなどで、長く利用されてきました。

USB PDが現在のUSB給電における標準的な存在になってきた一方、Quick Chargeも進化を続けています。

そのため、USB PDとQuick Chargeは、Androidスマートフォンの急速充電を支えてきた代表的な技術と考えると分かりやすいでしょう。

メーカー独自の「超急速充電」もある

スマートフォンの充電をさらに高速化するため、メーカー独自の充電技術もあります。

代表的なものとして、

  • OPPO系:SUPERVOOC
  • Xiaomi:HyperCharge
  • Huawei:SuperCharge
  • Motorola:TurboPower

などがあります。

こうした独自技術では、スマートフォン、充電器、ケーブルなどを組み合わせて、高速な充電を実現しています。

そのため「67W」「80W」「120W」など、USB PDの一般的なスマートフォン向け充電よりも高い数字が登場することがあります。

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なぜメーカー独自規格があるの?

「USB PDがあるなら、全部USB PDにすればいいのでは?」と思うかもしれません。

しかしメーカー独自の充電方式には、

  • より高速な充電
  • 充電中の温度管理
  • バッテリーへの電力制御
  • 専用充電器との組み合わせ
  • 独自の充電回路

などをメーカー側で最適化できるメリットがあります。

つまり、汎用性を重視するUSB PDと、速度や独自の制御を重視するメーカー独自技術が並行して進化しているわけです。

そして「PowerIQ」のような充電器メーカー独自技術もある

ここで少しややこしくなるのが、AnkerのPowerIQです。

PowerIQはAnkerが開発した独自の充電技術です。

ここで重要なのは、PowerIQはUSB PDやPPSと同じ「業界共通規格」ではないということです。

PowerIQは、Ankerの充電器側に搭載される技術として、接続された機器を認識したり、適切な電力を供給したり、複数の機器を接続した際の電力配分を最適化したりする役割を持っています。

つまり、USB PD・PPS
→ USBの給電に関する標準的な仕組み

PowerIQ
→ Ankerの充電器側で電力供給を最適化する独自技術

という違いがあります。

ここは、PowerIQ=USB PDの別バージョンと考えないことがポイントです。

「IQ」という名前は規格名ではない

AnkerのPowerIQが有名なので、「IQ」という名前を充電規格の一種だと思ってしまうかもしれません。

しかし、PowerIQはAnkerの商品・技術ブランドです。

USB PDやPPSのように、USB-IF(USB規格の仕様策定、管理を行う団体)が定めるUSBの標準規格というわけではありません。

そのため充電器を比較するときは、「PowerIQ対応だからUSB PD対応」とは考えず、USB PDに対応しているか?PPSに対応しているか?を個別に確認する必要があります。

そのうえでPowerIQなどのメーカー独自技術が加わっている、と考えると分かりやすいでしょう。

「100W」と「100W」は同じではない!?

例えば、USB PD 100Wと、メーカー独自方式の100Wは、同じ「100W」という数字でも意味が異なる場合があります。

数字だけを見ると、

100W > 67W > 45W

ですが、実際の充電速度はそれほど単純ではありません。

確認したいのは、

  • どの充電規格なのか
  • スマートフォン側が対応しているか
  • 充電器側が対応しているか
  • ケーブルが対応しているか
  • 最大出力がどの条件で実現するのか

です。

最大充電速度は「ずっと最大」ではない

「100W急速充電対応」と書かれたスマートフォンでも、100Wで0%から100%まで充電するわけではありません。

充電中は電力が変化します。

例えば、

  1. バッテリー残量が少ない
  2. 大きな電力で充電
  3. 残量が増える
  4. 充電電力を徐々に下げる
  5. 満充電に近づく
  6. さらに電力を抑える

というように制御されます。

そのため「最大100W」という数字は、充電中の一部で到達する可能性がある最大値と考えるほうが実態に近いでしょう。

実際の充電速度を比較するときは、「0~50%まで何分」「0~100%まで何分」などの実測値を見るほうが分かりやすい場合があります。

充電器とケーブルも重要

急速充電では、スマートフォンと充電器だけを見てはいけません。

ケーブルも重要です。

例えば、

  • スマートフォン:100W対応
  • 充電器:100W対応
  • ケーブル:60W対応

という組み合わせでは、ケーブルが制限要因になる可能性があります。

逆に、

  • スマートフォン:30W対応
  • 充電器:100W対応
  • ケーブル:240W対応

としても、スマートフォンが30Wまでなら100Wでは充電できません。

つまり、急速充電は「一番強いもの」に合わせるのではなく、3者の組み合わせで決まると覚えておくと分かりやすいでしょう。

ワイヤレス充電の「Qi」とは?

ここまでは有線充電の話でした。
一方、スマートフォンには、ワイヤレス充電もあります。

代表的な規格が、Qi(チー)です。

QiはWireless Power Consortium(WPC)が策定しているワイヤレス充電の国際規格です。

スマートフォンを充電パッドなどに置くだけで充電できるため、ケーブルを抜き差しする必要がありません。

Qi2とは?

そして現在、ワイヤレス充電で注目されているのが、Qi2です。
Qi2はQiを発展させた新しいワイヤレス充電規格です。

大きな特徴の一つが、磁石による位置合わせです。

充電器とスマートフォンの位置がずれると、ワイヤレス充電では効率が悪くなることがあります。
Qi2では磁石を利用して正しい位置に合わせやすくすることで、使いやすさや充電効率の向上を狙っています。

さらに現在は、Qi2 25Wも登場しています。
「ワイヤレス充電=遅い」というイメージも、少しずつ変わってきています。

Qi2とMagSafeは同じ?

iPhoneユーザーには、MagSafeという言葉もおなじみです。
MagSafeはAppleが展開する磁気式の充電・アクセサリーシステムです。

一方、Qi2はWPCが策定するワイヤレス充電規格です。

両者は同じものではありませんが、磁石で位置を合わせるという考え方には共通する部分があります。

充電規格を一覧で整理

規格・技術種類特徴
USB PD標準給電規格USBの高速給電の中心的存在
PPSUSB PDの機能電圧・電流を細かく調整
Quick Charge急速充電技術Qualcommが開発
SUPERVOOCメーカー独自技術OPPO系など
HyperChargeメーカー独自技術Xiaomi系
SuperChargeメーカー独自技術Huawei系
TurboPowerメーカー独自技術Motorola系
PowerIQ充電器メーカー独自技術Ankerの充電・電力管理技術
Qiワイヤレス充電規格ワイヤレス充電の代表的な標準規格
Qi2ワイヤレス充電規格磁気による位置合わせなどを採用
Qi2 25Wワイヤレス充電規格Qi2の高速化

結局、充電器は何を見ればいい?

現在のスマートフォン用充電器を選ぶなら、まず、USB PD対応を確認します。
さらにAndroidスマートフォンの急速充電を重視するなら、PPS対応もチェックしたいところです。
そして、必要なW数も確認します。

例えばスマートフォンが最大45Wなら、45W以上の充電器を選ぶことで、充電器側が性能のボトルネックになることを避けられます。

メーカー独自の急速充電を利用する場合は、対応する充電器・ケーブルが必要になることがあります。

Ankerなどの充電器メーカーでは、さらにPowerIQのような独自技術が搭載されている場合があります。
ここでも、USB PD・PPSと、PowerIQは役割が違うことを覚えておきましょう。まとめ:これからは「W数」だけでなく「充電規格」を見る

スマートフォンの充電は、以前よりかなり複雑になっています。
しかし、役割を分けて考えると分かりやすくなります。

USB PD
→ USBで大きな電力を供給する標準的な給電規格

PPS
→ USB PDで電圧・電流を細かく調整する仕組み

Quick Charge
→ Qualcommが開発した急速充電技術

SUPERVOOC・HyperChargeなど
→ スマートフォンメーカー独自の急速充電技術

PowerIQ
→ Ankerなど充電器メーカーが提供する独自の充電・電力管理技術

Qi・Qi2
→ ワイヤレス充電の規格

そして何より重要なのが、「○W」という数字だけでは、実際の充電性能は分からないということです。
スマートフォン本体、充電器、ケーブル、対応する充電規格が組み合わさって、実際の充電性能が決まります。

これから充電器を選ぶなら、USB PD対応に加えて、PPS対応かどうかも確認しておくとよいでしょう。
そしてPowerIQのようなメーカー独自技術については、USB PDやPPSとは別のカテゴリーとして考えることがポイントです。

「100Wだからすごい」「67Wだから速い」という数字だけの比較から一歩進んで、「その○Wを、どの規格・どの技術で実現しているのか?」を見る。

これが、これからのスマートフォン・充電器選びでは重要になりそうです。

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