
テレビのニュース中継やスポーツ中継といえば、かつては衛星中継車が当たり前でした。
しかし現在では、多くの現場で 携帯回線(4G・5G)を利用した映像伝送が使われています。その代表的な機材がLiveU(ライブユー)です。
この装置は世界中のテレビ局や通信社で利用されており日本のニュース現場でも広く導入されています。実際の中継では従来の大型中継車ではなくバックパック型の小型送信装置だけで映像を送ることも珍しくありません。
では、なぜ携帯回線でテレビ中継が可能なのでしょうか。
複数の携帯回線を束ねる「ボンディング」
LiveUなどの映像伝送機器の最大の特徴は回線ボンディング(Bonding)という技術です。これは複数の携帯回線を同時に利用し1本の高速回線のようにまとめて使う仕組みです。
装置の中には複数のSIMカードが入りdocomo、au、SoftBank、楽天など複数キャリアの回線を同時に使用します。
例えばそれぞれの通信速度が20Mbps、15Mbps、18Mbpsだった場合、合計で 50Mbps以上の通信帯域を確保できることもあります。
さらに重要なのは、どれか1つの回線が不安定になっても他の回線が補うことで通信が途切れにくい点です。携帯回線は場所や混雑状況によって速度が変化するため複数回線を束ねることで安定した映像伝送を実現しています。
テレビ中継の常識を変えた技術
この仕組みによってテレビ中継のスタイルは大きく変わりました。
従来の中継方法は主にSNG(衛星中継)やFPU(マイクロ波回線)でした。
衛星中継は高品質で安定していますが中継車が必要、設営に時間がかかる、コストが高いといった課題があります。
一方、携帯回線を利用した中継装置は小型で持ち運び可能、セットアップが早い、都市部でも使いやすいといったメリットがありニュースやスポーツ中継、災害報道などさまざまな場面で活用されています。
収録素材の伝送にも使われる
この機材はライブ中継だけでなく収録素材の伝送にも利用されています。
例えばニュース取材では撮影を行いその現場で映像データを送信、数分後には放送局に到着という運用も可能です。
かつて取材現場から素材を送る方法は主に次の3つでした。
・FPU(マイクロ波回線)による素材伝送
・SNG(衛星回線)による伝送
・バイク便などによる物理搬送
特に都市部では屋上などから放送局の受信点へ向けて電波を送るFPUによる素材伝送が長く主流でした。
しかし近年は携帯回線の高速化によりインターネット経由で直接素材を送信する運用も増えています。
携帯回線を利用した伝送装置を使えばFPUの受信点を探したり、中継車を手配したりする必要がなく、より迅速な素材送信が可能になります。
イスラエル企業が強い分野
この分野で興味深いのは主要メーカーの多くが イスラエル企業であることです。
代表的なメーカーであるLiveUもイスラエルで設立された企業です。

出典:LiveU JAPAN株式会社
イスラエルは通信技術やネットワーク技術のスタートアップが多いことで知られており、高度な通信制御や映像圧縮技術の研究が盛んな国でもあります。
LiveUの技術は放送局だけでなく政府機関・公共安全機関・災害対応組織などでも利用されています。なお、「軍事技術をそのまま転用した」という公式な説明は確認されていませんがイスラエルの通信技術の強さが背景にあることはよく知られています。
5G時代の中継
現在は5Gの普及によって、携帯回線の通信速度も大きく向上しています。
特にSub6(n77など)と呼ばれる5G帯域では、1回線でも非常に高速な通信が可能です。
そのため以前は6〜8回線必要だった中継でも最近では より少ない回線で運用できるケースも増えています。
携帯回線の進化は、テレビ中継のスタイルも大きく変えつつあるのです。