
スマートフォンの通信性能はCPU性能、GPU性能だけで決まるわけではありません。
実際に大きく影響するのはモデム(通信チップ)の性能です。
この記事では主要SoCである
・Snapdragon
・Dimensity
・Apple Aシリーズ
・Google Tensor
以外にもちょっとマイナーな
・Exynos
・Kirin
・UNISOC
のモデム構成と通信性能の違いを解説します。
- モデムとは何か
- SoCメーカーごとのモデム構成
- Snapdragon(Qualcomm)
- Dimensity(MediaTek)
- Apple(Aシリーズ)
- Apple自社モデムの動き
- Tensor(Google)
- Exynos(Samsung)
- Kirin(Huawei)
- UNISOC
- モデム性能の全体傾向(2026年)
- 日本での通信性能の違い
- 結論
モデムとは何か
モデムとはスマートフォンが基地局と通信するためのチップです。
主に以下を制御しています。
・5G通信
・LTE通信
・キャリアアグリゲーション(CA)
・電波の受信感度
・通信速度
つまりスマホの電波性能を決める最重要パーツです。
SoCメーカーごとのモデム構成
まず大きな違いはモデムの搭載方式です。
| メーカー | モデム構成 |
|---|---|
| Snapdragon | SoC内蔵 |
| Dimensity | SoC内蔵 |
| Tensor | SoC内蔵(外部設計ベース) |
| Exynos | SoC内蔵 |
| Kirin | SoC内蔵 |
| Apple | 外付け |
| UNISOC | SoC内蔵 |
Androidスマートフォンの多くはSoCにモデムが統合されています。
一方で Apple のiPhoneはSoCとは別にQualcomm 製モデムを搭載する構成です。
Snapdragon(Qualcomm)
メーカー:Qualcomm(アメリカ)
代表SoC
・Snapdragon 8 Genシリーズ
・Snapdragon 7 Genシリーズ
代表モデム
・X65
・X70
・X75
・X80 / X85
特徴
Snapdragonはモデム技術が世界トップクラスと評価されています。
最新世代では5G Advanced対応・高度なキャリアアグリゲーション・AIによる電波最適化などが実装されています。
例として
X85モデムでは
・下り 最大12.5Gbps
・上り 最大3.7Gbps
という性能です。
対応範囲も広く
・Sub6
・ミリ波
・グローバルバンド
すべてに強いのが特徴です。
強み
・通信速度
・受信感度
・CA性能
・ミリ波対応
現時点ではスマホモデムの基準的存在です。
Dimensity(MediaTek)
メーカー:MediaTek(台湾)
代表SoC
・Dimensity 9000
・Dimensity 9200
・Dimensity 9300
特徴
DimensityはSoCに5Gモデムを統合した構成です。近年は大きく進化しており4CC / 5CC CA対応・Sub6性能向上・省電力性能が強化されています。
特にSub6中心の環境ではSnapdragonとほぼ同等と評価されることもあります。
弱点
・ミリ波対応が少ない
・対応バンドがやや限定的
・キャリア認証が弱い
そのためアジア市場中心の採用が多い傾向です。
Apple(Aシリーズ)
メーカー:Apple(アメリカ)
代表SoC
・A16 Bionic
・A17 Pro
・A18
特徴
Aシリーズは
・CPU
・GPU
・AI性能
ではトップクラスですが通信は特殊な構成です。SoCにモデムは内蔵されておらず外付けモデムを使用します。
モデム供給元
・Qualcomm
例
・iPhone 15 → X70
・iPhone 16 → X75
性能としてはSnapdragonと同等クラスの通信性能になります。
Apple自社モデムの動き
Apple は現在自社モデムの開発を進めています。
初期モデルとしてC1モデムが登場していますが現時点ではQualcomm の方が性能面で優位と見られています。
ただし今後は大きく進化する可能性があります。
Tensor(Google)
メーカー:Google(アメリカ)
代表SoC
・Tensor G2
・Tensor G3
・Tensor G4
特徴
TensorはSamsung Electronics の技術をベースにしたSoCです。モデムも同様にSamsung系(Exynosモデム)がベースになっています。
特徴としてはAI処理との連携・Pixel向け最適化が重視されています。
通信性能
・Sub6 → 良好
・ミリ波 → 一部対応
ただし評価としてはSnapdragonより一段下とされることが多いです。
弱点
・受信感度のバラつき
・発熱
・通信安定性
Exynos(Samsung)
メーカー:Samsung Electronics(韓国)
代表SoC
・Exynos 2200
・Exynos 2400
特徴
ExynosはGalaxyシリーズの一部モデルに採用されるSamsungの自社SoCです。モデムはSoC内蔵型(Shannonモデム)です。
通信性能
・Sub6 → 良好
・ミリ波 → 対応(地域限定)
近年は改善が進んでおり安定性・省電力が向上しています。
ただし評価としてはSnapdragonより一段下とされることが多いです。
弱点
・Snapdragon版との性能差
・発熱・電力効率
Kirin(Huawei)
メーカー:Huawei(中国)
代表SoC
・Kirin 9000
・Kirin 9000S
特徴
KirinはHuaweiの自社SoCです。モデムはSoC内蔵型で高い統合度が特徴です。
5G統合設計・省電力性能・高効率な通信制御
ただし現在は制裁の影響により
・製造制限
・5G機能制限(モデルによる)
がありグローバルでの採用は限定的です。
UNISOC
メーカー:UNISOC(中国)
代表SoC
・T820
・T770
・SC9863A
特徴
UNISOCは低価格帯スマホ向けSoCを主戦場としています。モデムはSoC内蔵型です。
通信性能
・Sub6 → 基本対応
・LTE → 問題なし
・5G → エントリー向け
強み
・低コスト
・シンプル構成
弱点
・CA性能が弱い
・対応バンドが限定的
・グローバル対応が弱い
モデム性能の全体傾向(2026年)

| 項目 | Snapdragon | Dimensity | Apple | Tensor | Exynos | Kirin | UNISOC |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通信速度 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | △ |
| 受信感度 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ○ | ○ | △ |
| ミリ波 | ◎ | △ | ◎ | △ | △ | △ | × |
| バンド対応 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ○ | △ | △ |
| 省電力 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
日本での通信性能の違い
日本の5G主力バンドn77・n78・n79のこれらはすべてSub6(サブシックス)です。
この環境ではSnapdragon・Dimensity・Apple・Tensor・Exynosで大きな体感差は出にくいです。
ただしミリ波・高次CAではSnapdragonが優位になる傾向があります。
KirinやUNISOCは対応バンドの関係で注意が必要です。
結論
スマートフォンの通信性能はモデム性能に大きく依存します。
〈現在の構図〉
Snapdragon→ モデム最強・基準
Dimensity→ コスパ・省電力
Apple→ Qualcommモデムで高性能
Tensor→ Pixel最適化・やや不安定
Exynos→ 改善中・中堅
Kirin→ 制約あり・限定的
UNISOC→ 低価格特化
最も重要なのは対応バンド・アンテナ設計(RF設計)・キャリア最適化
です。同じSoCでも機種によって通信性能は大きく変わるためスペック表だけで判断しないことが重要です。