
SpaceX(スペースX)が運用するStarlink(スターリンク)は、低軌道衛星を利用してインターネット通信を提供するサービスです。
Starlinkでは、KuバンドやKaバンドなどの周波数帯が使われています。また、米国では第2世代衛星と地上局を結ぶ通信にEバンドを利用することも認可されています。
一方、auの「au Starlink Direct」のように、スマートフォンと衛星が直接通信するサービスでは、異なる周波数帯が使われます。
au Starlink Directでは、スマートフォンが対応している携帯電話向けの2GHz帯を利用します。LTE Band 1に相当する周波数帯ですが、Band 1に対応しているスマートフォンなら、どれでも衛星通信ができるというわけではありません。
なぜ同じ周波数帯なのに、利用できるスマートフォンが限られるのでしょうか。
この記事では、Ku・Ka・Eバンドの特徴に加え、au Starlink Directの周波数や、スマートフォン側に必要な機能について解説します。
Starlinkで使われる周波数帯とは?
Starlinkの通信は、どの機器同士が通信するのかによって、使用する周波数帯が異なります。
大きく分けると、次の2つの通信経路があります。
- 衛星とユーザー端末の通信:家庭などに設置するStarlinkアンテナと衛星の通信
- 衛星と地上局の通信:インターネット網へ接続するための中継回線
それぞれの通信では、用途やシステム構成に応じて異なる周波数帯が使われます。
| 周波数帯 | 主な用途・特徴 |
|---|---|
| Kuバンド | ユーザー端末との通信など |
| Kaバンド | ユーザー端末や地上局との通信など |
| Eバンド | 第2世代衛星と地上ゲートウェイ間の通信に向けた利用 |
ただし、これらの周波数帯がすべてのStarlink衛星や通信経路で一律に使われているわけではありません。衛星の世代や国ごとの電波利用条件によっても異なります。

Kuバンド(12〜18GHz)
Kuバンドは、衛星通信で広く利用されてきた周波数帯です。Starlinkでも、ユーザー端末との通信などに利用されています。
Kuバンドの特徴
Kuバンドは、地上の携帯電話で使われる周波数よりも高い領域にあります。衛星通信では、ユーザー端末や地上局との間でデータを送受信するために利用されます。
主な特徴は次のとおりです。
- 衛星インターネットで広く利用されている
- ユーザー端末との通信などに使用される
- Kaバンドなどと組み合わせて衛星ネットワークを構成できる
Starlinkで使われる周波数の例
| 通信方向 | 周波数の例 |
|---|---|
| 衛星 → 地上 | 10.7〜12.7GHz |
| 地上 → 衛星 | 14.0〜14.5GHz |
これらは衛星通信で使われる周波数範囲の例です。実際に利用される範囲は、国や衛星システム、通信経路によって異なります。
KuバンドはStarlinkだけでなく、衛星テレビや船舶向け衛星通信などでも利用されてきました。
Kaバンド(26〜40GHz)
Kaバンドは、Kuバンドよりも高い周波数帯です。Starlinkでは、ユーザー端末との通信や、衛星と地上局を結ぶ回線などに利用されています。
Kaバンドの特徴
Kaバンドの利点は、広い周波数帯域を確保しやすく、大容量通信に活用できることです。
一方、周波数が高くなるほど、一般に雨による電波の減衰が大きくなりやすいという特徴があります。強い雨では、通信品質に影響する場合があります。
Starlinkで使われる周波数の例
| 通信方向 | 周波数の例 |
|---|---|
| 衛星 → 地上 | 17.8〜18.6GHz、18.8〜19.3GHzなど |
| 地上 → 衛星 | 27.5〜29.1GHz、29.5〜30.0GHzなど |
これらは米国のStarlink第2世代衛星に関する認可資料で示されている周波数範囲の例です。実際の利用範囲は、通信経路や運用条件によって異なります。
なお、Kaバンドは単純に「高速通信専用」というわけではありません。Kuバンドと同様に、通信経路やネットワーク全体の設計に応じて利用されます。
Eバンド(71〜86GHz)
Eバンドは、70〜80GHz台の非常に高い周波数帯です。
Starlinkについては、米国で第2世代衛星と地上ゲートウェイを結ぶ通信にEバンドを利用することが認可されています。
Eバンドの周波数
| 通信方向 | 周波数 |
|---|---|
| 衛星 → 地上局 | 71〜76GHz |
| 地上局 → 衛星 | 81〜86GHz |
衛星と地上局を結ぶ回線は、一般に「フィーダーリンク」と呼ばれます。
フィーダーリンクは、衛星ネットワークと地上のインターネット網をつなぐ重要な通信経路です。ユーザーの通信をインターネット網へ中継する役割を担います。
Eバンドなら必ず高速になる?
高い周波数帯では、広い帯域幅を確保できる可能性があります。ただし、周波数が高いという理由だけで、通信速度が必ず速くなるわけではありません。
実際の通信性能は、利用できる帯域幅、アンテナ、送信電力、通信方式、電波環境などによって決まります。
また、EバンドはStarlinkのすべての衛星や通信経路で一般的に使われていると断定できるものではありません。ここでは、米国で第2世代衛星と地上ゲートウェイ間の通信に向けた利用が認可されている帯域として理解しておくとよいでしょう。

au Starlink Directは何GHzを使う?
ここからは、スマートフォンと衛星が直接通信する仕組みを見ていきます。
auが提供する「au Starlink Direct」は、Starlink衛星と対応スマートフォンを直接接続するサービスです。
携帯電話の基地局が届かない場所でも、空が見えるなどの条件が整えば、メッセージの送受信や対応アプリのデータ通信などを利用できます。
このサービスで使われるのは、Ku・Ka・Eバンドではなく、携帯電話向けの2GHz帯です。
au Starlink Directの使用周波数
| 通信方向 | 周波数範囲 |
|---|---|
| スマートフォン → 衛星 | 1920〜1980MHz帯の一部 |
| 衛星 → スマートフォン | 2110〜2170MHz帯の一部 |
KDDIの技術資料では、上り・下りともに、それぞれの周波数範囲内で最大5MHz幅を利用する仕様が示されています。
この周波数は、地上の携帯電話でも使われるLTE Band 1に相当する2.1GHz帯です。
なぜKu・Kaバンドではないの?
スマートフォンとの直接通信では、携帯電話向けの周波数を活用する方式が採用されているためです。
家庭用Starlinkでは、専用アンテナが衛星との通信を担います。一方、Starlink Directでは、対応するスマートフォン自体が衛星と直接通信します。
| 比較 | 家庭用Starlink | au Starlink Direct |
|---|---|---|
| 通信相手 | 専用アンテナと衛星 | スマートフォンと衛星 |
| 主な周波数帯の例 | Ku・Kaバンドなど | 携帯電話向け2GHz帯 |
| 専用アンテナ | 必要 | 不要 |
| 主な用途 | インターネット接続 | メッセージや対応アプリなど |
スマートフォンは小型で、送信電力やアンテナの大きさにも制約があります。そのため、衛星側のアンテナや通信システムを工夫し、スマートフォンとの直接通信を実現しています。
ただし、利用できる機能や通信品質は、対応機種、サービスの提供条件、衛星の位置、周囲の遮蔽物などによって異なります。
LTE Band 1対応なら衛星通信できる?
ここは、スマートフォンの対応バンドを調べるときに注意したいポイントです。
LTE Band 1に対応していることと、衛星通信に対応していることは別です。
Band 1は、スマートフォンが2.1GHz帯の携帯電話通信に対応していることを示します。しかし、それだけでは衛星との直接通信に必要な機能がそろっているとは限りません。
例えるなら、Band 1への対応は「その周波数の電波を使えるラジオを持っている」という状態です。
実際に衛星と通信するには、その電波を使って衛星通信の仕組みを動かすための対応も必要になります。
1. 無線回路・アンテナが対応している
スマートフォンには、電波を送受信するアンテナや無線回路が搭載されています。
Band 1対応のスマートフォンであれば、通常の携帯電話通信に必要な2.1GHz帯の送受信機能を備えています。
しかし、衛星との通信では、遠く離れた衛星からの弱い電波を受信し、スマートフォンからの電波を衛星へ届けなければなりません。
衛星側のアンテナや通信方式を含め、衛星通信システム全体として接続できることが必要です。
2. モデムが衛星との通信に対応している
スマートフォンの内部には、電波を送受信するだけでなく、携帯電話の通信規格に従ってデータをやり取りするためのモデム(ベースバンド)が搭載されています。
モデムは、電波をデジタルデータに変換する処理や、通信の確立、データの送受信などを担います。
衛星との直接通信では、衛星側のシステムと接続し、通信を成立させるための対応が必要です。
衛星は地上の基地局よりもはるかに遠く、移動もしています。通信の遅延や周波数のずれなど、地上の基地局との通信とは異なる条件にも対処しなければなりません。
ただし、au Starlink Directにおいて、各機種のモデム内部でどのような処理が実装されているか、その詳細すべてが公開されているわけではありません。ここで説明しているのは、衛星通信を成立させるために関係する一般的な技術要件です。
3. ソフトウェア・OSが衛星通信に対応している
無線回路やモデムが対応していても、スマートフォンのソフトウェアが衛星通信を扱えなければ、サービスを利用できない場合があります。
スマートフォンでは、モデムのファームウェア、OS、通信事業者向けの設定などが連携して通信を制御しています。
衛星通信では、衛星を検出したときの動作や、地上の携帯電話ネットワークから衛星通信への切り替え、衛星通信に適した接続処理などが関係します。
そのため、機種によってはソフトウェアアップデートによって利用可能な機能が追加されることもあります。
auも、対応機種について最新のOSやソフトウェアへのアップデートを案内しています。
4. 通信事業者による動作確認が必要
最後に、そのスマートフォンが実際にサービスを利用できるかどうか、通信事業者側での対応や動作確認も重要です。
同じ機種名でも、国内版と海外版、販売元の違いなどによって、通信機能やソフトウェア構成が異なる場合があります。
そのため、LTE Band 1に対応しているというスペック情報だけで、au Starlink Directが利用できると判断することはできません。
最終的には、auが公開している対応機種一覧で確認する必要があります。

au Starlink Directは古いスマホでも使える?
対応機種は最新モデルだけではありません。
auの対応機種一覧には、過去に発売されたiPhoneやAndroidスマートフォンも含まれています。
ただし、対応状況は機種ごとに異なり、利用できる機能にも違いがあります。
たとえば、衛星通信によるメッセージ送受信には対応していても、対応アプリを使ったデータ通信には対応していない機種があります。
また、今後のソフトウェアアップデートによってデータ通信への対応が予定されている機種もあります。
つまり、対応機種を確認するときは、単に機種名が一覧に載っているかだけでなく、メッセージサービスとデータ通信のどちらに対応しているかも確認することが大切です。
最新の対象機種や利用できる機能については、au Starlink Directの対応機種一覧で確認できます。
スマホと衛星の直接通信は、すべて同じ周波数?
そうとは限りません。
au Starlink Directは2GHz帯を利用していますが、衛星とスマートフォンの直接通信サービスで使われる周波数は、国や携帯電話事業者、採用する通信システムによって異なります。
SpaceXのDirect to Cellは、各国の携帯電話事業者と連携し、事業者が利用する携帯電話向け周波数を活用する方式で展開されています。
また、SpaceXは米国のEchoStarが保有するSバンド系などの周波数資源を取得する契約を発表しています。これは次世代Direct to Cellの大容量化に向けた計画に関係するもので、現在のau Starlink Directがその周波数を利用しているという意味ではありません。
今後は衛星の世代や各国の電波利用条件に応じて、利用する周波数や通信性能が変わっていく可能性があります。

5Gのミリ波とはどう違う?
スマートフォンの5Gでも、28GHz帯などのミリ波が利用されています。
周波数を比較すると、次のようになります。
| 通信・周波数帯 | 周波数の例 |
|---|---|
| au Starlink Direct | 約2.1GHz帯 |
| 5Gミリ波 | 約28GHz帯 |
| Starlink Kuバンド | 約12〜18GHz |
| Starlink Kaバンド | 約26〜40GHz |
| Starlink Eバンド | 約71〜86GHz |
au Starlink Directの周波数は、5Gミリ波やStarlinkのKaバンドよりも低い領域です。
ただし、周波数が高ければ必ず通信速度が速くなる、低ければ必ず安定する、という単純な関係ではありません。通信速度や安定性は、帯域幅、電波環境、アンテナ性能、通信方式などの影響を受けます。
また、5Gミリ波は主に地上の基地局とスマートフォンの通信に使われる一方、StarlinkのKu・Kaバンドは衛星通信のさまざまな経路に利用されます。周波数だけでなく、通信システム全体の違いも重要です。
なぜ衛星通信では高い周波数が使われるのか?
衛星インターネットでは、多くのユーザーに大容量の通信を提供する必要があります。そのため、広い帯域幅を確保できる高い周波数帯が活用されています。
ただし、高い周波数には注意点もあります。
- 雨による減衰:周波数帯や雨の強さによって、通信への影響が大きくなる
- 見通しの確保:衛星との間に建物や地形などの遮蔽物があると、通信が難しくなる
- アンテナ設計:周波数に応じたアンテナやビーム制御が必要になる
一方、スマートフォンとの直接通信では、既存の携帯電話向け周波数を利用する方式によって、専用の衛星アンテナを持たない端末との接続を実現しています。
ただし、携帯電話向けの周波数を利用するからといって、地上の基地局と同じように屋内でも使えるわけではありません。
au Starlink Directでは、基本的に空が見える環境が必要です。建物や山、木などの遮蔽物があると、接続が制限される場合があります。
まとめ:対応バンドと衛星通信への対応は別
Starlinkでは、Ku・Kaバンドなどを利用して衛星とユーザー端末や地上局を接続し、衛星インターネットの通信網を構成しています。Eバンドについても、第2世代衛星と地上ゲートウェイ間の通信に向けた利用が米国で認可されています。
一方、au Starlink Directのようなスマートフォンと衛星の直接通信では、携帯電話向けの2GHz帯を利用しています。
| 周波数帯・方式 | 主な役割 |
|---|---|
| Kuバンド | 衛星とユーザー端末などの通信 |
| Kaバンド | 衛星とユーザー端末・地上局などの通信 |
| Eバンド | 第2世代衛星と地上ゲートウェイ間の通信に向けた利用 |
| 携帯電話向け2GHz帯 | au Starlink Directのスマートフォン直接通信 |
そして、スマートフォン側で重要なのが、対応バンドと衛星通信への対応を区別することです。
LTE Band 1に対応しているだけでは、au Starlink Directが使えるとは限りません。
無線回路やアンテナだけでなく、モデム、ファームウェア、OS、通信事業者側の対応などが関係するためです。
スマートフォンのスペック表で対応バンドを確認することは大切ですが、衛星通信サービスを利用したい場合は、対応機種一覧まで確認する必要があります。
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